SPIRIT GARDEN 2009, Mantova
イタリア・マントバでの子供のためのワークショップSPIRIT GARDENは、マントバ文学祭Festivaletteratura Mantova 2009 のイベントの一つに招待されて開催したもの。 マントバ文学祭は、マントバ市民にとって、一年に一度、一番の大イベント。普段は、これほど静かな町ってないだろう、というくらい、静かなマントバが、この5日間だけ、世界中の文学者、文学愛好家を呼び集めて、世界の中心 になる。5日間の開催中、作家やアーティスト100人が世界から招待され、朗読会や、トークやディスカッション、ワークショップ、展覧会、記録映画の上映など、200以上のイベントが、朝の10時から夜中すぎまで、町じゅうのいろいろな場所で開かれる。市内の学校は休校となり、高校生以上の学生は、全員、その運営スタッフとして働く。また、普段は隠居生活を送っている人も、記録写真を撮る係になったり、イベントの受け付けの手伝いをしたり、まさに市民全員参加の文化祭。
大きなウインドウがあれば、SPIRIT GARDENができるでしょう、と、用意してくれた会場は、しばらく空き家になっていたという築200年くらいの建物の中。中庭に向って、床から天井までの大きなウインドウが2つもある。ウインドウの前には、よい具合のアーチとギリシャ・ドーリア式のエンタシス(円柱)。イタリアの旧市街の中は、どこを切り取っても本物だから、本当に絵になる。
今回は、ほかにもイベントがたくさんある関係で、時間は1時間半から長くても2時間、ということを、マントバに着いてから聞く。うわー、わかっていたら、別のワークショップを提案したのに、と思うけれど、ここマントバに本社があるコライーニ出版のスタッフも、「うちでやるんだったらもっと時間を取るんだけど、何しろ文学祭という大きなイベントの中の一つだから・・・」と困り顔。大人の都合で、子供のための時間について妥協したくはないけれど、みんな文学祭の準備で大忙しなのだから、ここでゴネても仕方がない。頭の中を100倍速ぐらいでフル回転させて、ワークショップのキモを時間内にたっぷり味わえて、ちゃんと1時間半で森が出現するように、計画しなおす。
もともとのスピリットガーデンは、最初、みんなで庭に出て、いろんな葉っぱをじっくり観察して、これはいい、と思う葉っぱ-完璧なのばっかりではなくて、半分枯れかけてたり、虫が 食った良い穴があいていたり、そういう世界に一つしかなさそうな個性的な素敵な葉っぱを、できるだけたくさん集めてきて、それを、できるだけ本物にそっくりに絵に描いて、葉っぱに時間がたってもしおれてしまわない永遠の命を与え、そうして、それで世界に一つだけの森を構築する。その森にいそうな動物や虫も、つくる・・・、そういうものなのだけれど、庭に出て葉っぱを集めている時間は、とても取れなそうだから、葉っぱはあらかじめ、私がいろいろ集めてきて、それをバケツの水に生けたものを準備して、そのなかから、子供たちに葉っぱを選んでもらって、絵に描いてもらうことにする。1時間半でこのウインドウ2枚が一杯になる森にするとしたら、大きめの葉っぱも、意図的に選んでおいたほうがいいな・・・。
というわけで、次の朝一番に、コライーニ社に寄って、大きなはさみとビニール袋を借り、葉っぱ狩りに出る。いろんな葉っぱが集められるような庭って、どこにあるかしら、と聞くと、市民公園があるわよ、と言うので行ってみると、公園というよりも、幾何学的に植え込みが刈り込まれた、整然たるイギリス庭園。わぁ、ここで、鋏をふるうのは、ためらわれるなあ・・・、と思いつつ、でも、葉っぱがないとワークショップができないので、なるべくめだたないあたりの細かい枝を、ばっさ、ばっさと切って、ビニール袋に詰め込んだが、このビニール袋がまた見事に透明なので丸見え。汗をしっぽりかきながら、いろんな種類の葉っぱのついた枝を集めたが、どうにも整備されすぎていて、ワイルドな面白い葉っぱは、あまり集められない。とにかく、袋をいっぱいにして、それを脇に抱えて、逃げるようにしてコライーニ社に戻ると、社長のマウリツィオ・コライーニさんが、ケンタッキーのカーネル・サンダースの像みたいに入口の所に立っていて、「採ってきました!」と袋を見せると、「ほう、よくタイホされなかったね」と、迎えてくれた。「もう、冷や汗かきっぱなしだったけど、何しろ庭がきれいすぎて・・・。どこか、近くに、もっと荒れ放題の庭ってないかしら」と聞くと、「そういえば、うちの中庭は、10年くらい手を入れていないじゃないの!」と、奥さんのマルツィア・コライーニさん。ありがたい!そのかなりワイルドな中庭で、思いっきり葉っぱ狩りをさせてもらって、バケツに3つが一杯になるくらいの緑を用意した。それから、会場のウインドウに、左右に広がる大木の枝を、えいやえいやと準備して、なにごともなかったように、さあ、マントバ版 SPIRIT GARDEN のはじまり、はじまり。
**********************
2009年9月12日
SPIRIT GARDEN 2009, Mantova
子供のためのデザインワークショップ 「スピリットガーデン2009、マントバ」
指揮 阿部雅世
プロジェクトメンバー: マントバ市の6,7歳の子供 15人
制作アシスタント: マントバ文学祭運営ボランティアスタッフ +Massimiliano Tapani
企画協力: コライーニ出版 主催: マントバ文学祭 Festivaletteratura
MasayoAve creation 公式サイト www.macreation.org
*記事、写真の無断転用は、ご遠慮ください。 転用ご希望の方は、info@macreation.org まで、ご一報ください。
コメント 0