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野良はち-ゲスト・オブ・ザ・イヤー2010

2010年の夏は、人生初めてともいえるような長い夏休みを取って、「ベルリンから出かけない生活」を堪能した。自分が動かないでいると、お客さんを迎えたり、もてなしたりすることもできる。

8月も半ばを過ぎて、日差しがだいぶ柔らかくなってきた明るい夏の午後、おもてなしのアップルパイをつくろうと、リンゴをくつくつと煮てパイ皮で包み、オーブンに入れた。良い色に焼けてきたので、オーブンから出して、アツアツのところに包丁を入れると、リンゴと一緒に煮たシナモンの甘い香りが、部屋じゅうに広がる。人数分のお皿に、パイを切り分けていたら、よい香りが窓の外まで流れていったのか、開けてあったキッチンの上窓から、はちさんが飛び入りしてきた。よほど味見をしたいとみえて、窓辺のティーテーブルの上に置いたパイのまわりを、ぶんぶんと飛びまわっているので、それならば、よろしかったらどうぞ、と、パイ皮のかけらを、窓枠のところにおいてみた。

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おお、ここまで喜んでいただけるとは!

そして、この日から、9月の終わりごろまで、毎日のように、はちさんをお迎えし、もてなすことになった。はちさんは、間違いなく、2010年のゲスト・オブ・ザ・イヤーである。通いの野良猫というのはよく聞くけれど、はちも同じことをするとは知らなかった。というわけで、今日は、その「野良はち」の話。

アップルパイの香りに誘われて飛び込んできたはちさんは、しばらくのあいだ、パイ皮に体を突っ込むようにして、もぐもぐしていたが、やがて満足したのか、出て行ってしまった。左の羽根が、ちょっと欠けているはちさんだった。まあ、喜んでもらえてよかったよかった、と思っていたら、あくる朝、同じはちさんが、また上窓から朝日の差し込むキッチンに入ってきた。もうパイはないけど、はちさんは何が好きなのか、まさかね、と思ったが、ちょうどミルクティーに蜂蜜を入れようとしていたところだったので、小さなエスプレッソ用のスプーンに、ちょっと蜂蜜をつけて、良かったらどうぞ、と差し出してみた。

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うまいうまい。

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ほんとに、うまいです。

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ぷは~っ。

一心不乱に蜂蜜をなめていたはちさんは、ぷは~っ、と一息つくと、羽根を震わせて、重そうに垂直上昇して、上窓からプーンと外へ出て行った。普通なら、あちこちの花を飛び回って、ちょっとずつ集めなければならない蜜が、こんなにどっさりとふるまわれたから、天国だったのかもしれない。南ドイツの森で採れた混ぜものなしの蜂蜜だったので、お口にあったのかもしれない。まあ、はちさんが喜んでなめる蜂蜜なら、安全なよい食品である気もする。

よかったよかった・・・と思っていたら、はちさんが戻ってきた。はちさんは、また蜂蜜をなめ、そしておなかがいっぱいになると、また重そうに垂直上昇して、上窓から外へ出て行った。はちさんは、何度もそれを繰り返し、スプーンの蜂蜜を全部なめてしまった。

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はちさんは、毎日、やってきた。気がつくと、スプーンがきれいになっていて、そのたびに、蜂蜜を補給しておいた。10日ほど経ったら、はちさんは来なくなった。スプーンのはちみつは手つかずのまま2日が過ぎたので、ああ、はちさんの季節も終わりかな、と思い、はちさん用の皿とスプーンをかたずけたが、それから3日ほどして、ティーテーブルの上に置いたままにしていた、朝のエスプレッソコーヒーのカップをかたずけようとしたら、カップの底にわずかに残っていた砂糖とコーヒーのどろどろに、はちさんが浸かってジタバタしていた。あら~たいへん!。羽根にも、脚にも、砂糖のシロップが絡みついて、カップから出ることもできなくなっている。

いそいでボールに水を張って、スプーンにはちさんをつかまらせると、ジャブジャブとなんども行水させた。そのうちに、羽根はすっかりきれいになったので、「いや~、蜂蜜なくて悪かったねえ、災難だったねえ」と、お皿の上で休んでもらい、たっぷりと蜂蜜をふるまうと、と、また一生懸命召し上がった。せっかくなので、写真に撮ろうとよく見ると、前に来たのとは違う、羽根が欠けてないはちさんだった。

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あ~、生き返る!

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うまいうまい。

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あーうまい。

そうするうちに、羽根が乾いてきて、おなかも一杯になったらしく、羽根を何度かすごい勢いで震わせると、垂直上昇して上窓から出て行った。そして、そのあと何度も戻ってきては、蜂蜜をなめ続けた。

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たまらん。

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ぜんぶなめた。

それから毎日通ってきたこのはちさんが、ぱたりと来なくなると、また、もう一匹別のはちさんがやってきて、いつもの蜂蜜をうまいうまいと平らげていった。 最初のはちさんが、あそこへ行け、と、遺言でも残したんじゃないかと思うほど、どのはちさんも同じようにやってきて、同じように蜂蜜をなめて行ったが、10月に入る頃になると、もうはちさんは来なくなり、そろそろ上窓を閉める季節になった。

これが、昨年の特別なお客様のはなし。私の中で、はちさんは、かなり特別な存在になった。今年も、やってくるかしら。

 

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阿部 雅世 公式サイト MasayoAve creation  www.macreation.org

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