欧州6空港のサインコレクション
エストニア往復から解放されてからしばらくは、空港も、飛行機も、しばらくはもういいです、という気分で、先に延ばせる出張は先に送り、ベルリンでじっくりこなせる平和な仕事を堪能する日々を過ごしたが、昨年後半あたりからは、そうもしてられなくなり、パリ、ロンドン、デュッセルドルフ、チューリッヒ、ミラノ、ウイーン、ミュンヘン、フランクフルト・・・と、これまたよく飛行機に乗ったり降りたりする生活がしばらく続いた。
せっかく、欧州各地の空港を出たり入ったりするのだから、ただ通り過ぎるのも芸がないと思い、各空港に降り立って出口へ向かう通路を歩きながら「空港のサイン」を集めてみた。ここのところ、グラフィック系の仕事に関わることが増えて、そのあたりを、一から、いや、ゼロから勉強し直さないと、と意識してのことでもある。
どこへ行っても1-2時間で着いてしまうので、ほとんど国内出張のようなものだけれど、国境を越えて、空港に降り立てば、言葉が変わり、文化が変わる。空港なんて、一見どこも似たり寄ったりの最たるものであるが、それでも、よくよく目を凝らせば、その国の真髄に触れるような違いを見つけることができる。空港のサインのように、同じようなルールでデザインされたものにも、お国柄や、都市の性格は、良くあらわれているもので、いままで、さんざん通り過ぎた、世界各地の空港で、私の二つの「フシアナ」は、いったい何を見ていたのかと、あらためて驚く。ものが目に映っているからといって、見ているとは限らない。見えども見えず、とはまさにこのこと。
というわけで、本日は、2010年フォルダーより、欧州6空港での収穫品を一同に公開。それでは、ヨーロッパ空港巡り、ご一緒にどうぞ。
9月23日
LONDON LGW イギリス、ロンドン・ガトウィック空港
この赤とブルーの色合いと、異様なほどのわかりやすさを見ると、イギリスに来たな、という気持ちになる。
サインはすべて黒い丸囲いの中に白抜き。私の記憶の中では、荷物のコンベアーの上に、「まさに今、荷物をとらんとす」と、持ち上げる手まで描いてあるのは、このロンドン、ガトウィック空港だけ。
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10月7日
ZÜRICH ZRH スイス、チューリッヒ空港
飛行機から降りて、最初に出会うサインはこれ。黒パネル。スイスでは、「シリアスでグレードが高くて最新のもの」を示す時、黒パネルに白ぬき文字をよく使う。トイレのサインは、英独二ヶ国語+ピクトグラム。ピクトグラムは、角の丸い四角の中に収められている。ひとが細い。
こちらのピクトグラムも、ラインが繊細。このラゲッジコンベアーの上には、さしみのツマのように、飛んでいる飛行機がついている。ミニマム一筋を目指す、ピクトグラムのデザインで、これは結構珍しい。
私の荷物はどこだ?の?マークは、カバンの中に。
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10月12日
MILANO MXP イタリア、ミラノ・マルペンサ空港
文字も、ピクトも、驚くほどごつい。ごつくて、大きい。
この緑色を、空港のサインボードの色として使う勇気があるところもイタリア。
この時計の直径は、悠に1.2メートルはある。室内時計で、こんなに大きな時計は、初めて見た。いくら空港は広いとはいえ、巨大です、ほんと。こんな一見アウトスケールなものを、平然ととりこんで、うまーくまとめてしまうところもイタリア。これって、できそうで、なかなかできないことです。イタリア。誰にも真似できない国。
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10月18日
WIEN VIE オーストリア、ウイーン空港
ウイーンのサインパネルは、黄色。WC というのは、英・独どちらでも「トイレ」という意味で、通用するということらしく、チューリッヒの様な二カ国語表記はなし。
「ウィーンへの出口」とわざわざ書いてある。ウィーン以外のどこへ出られるのか、とツッコミたくなるが、あちこち飛び回っていると、ここはどこだっけ、と思う可能性がないでもないのが国際空港なので、書いてあるとありがたいかも。地元の人にはわかりきっていることも、しっかりと示しておく、というのは、国際コミュニケーションの基本なので、そういう意味では、この姿勢は正しい。
ウイーン行きの荷物だけ通過できますよ、という意味か? カバンとラベルの絵は、なかなか秀逸だが、意味はよくわからなかった。
出口サインは、外開きの扉つきの平面図。
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10月20日MÜNCHEN MUC ドイツ、ミュンヘン空港
ミュンヘンといえば、1972年のミュンヘン・オリンピックのピクトグラムや、ルフトハンザのロゴを手掛けた、グラフィックデザインの巨匠、オトル・アイヒャーOtl Aicher。ミュンヘン・オリンピックのピクトグラムは、現代のピクトグラムの原点とも言われている。
このミュンヘン空港の、角が丸くない正方形の中にまとめたピクトグラムは、このオトル・アイヒャーの影響か、なかなかレベルが高いと見た。
やたらと単語が長くなるドイツ語には、この縦長フォントがよく合う。ドイツでピクトグラムが発達した理由の一つに、この長ったらしい単語問題があったのではないかと推測する。ウィーンでは、荷物の中に「?」があったけれど、ここの「?」は、荷物の外にある。
この空港のトイレマークは、男性女性の絵。トイレの扉に、よく描かれている絵としておなじみでしょう、という暗黙の了解にたよっている。
これは、ミュンヘンの国際見本市会場外のタクシー乗り場のサイン。おみごと!空港じゃないけど美しいので掲載。
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11月11日FRANKFURT FRA ドイツ、フランクフルト空港
ここも、濃紺のパネルに、かっちりとした正方形の枠の中にまとめられたピクトグラム。でも、ミュンヘンとは、微妙にデザインが違う。フォントは、ミュンヘンの方が美しかったな。
ちなみに、この紺色は、別名、ドイチュバンク・ブルーとよばれている紺色。ドイツ銀行のロゴに使われている色で、ドイツ、特に元西ドイツにおいては、「誠実で、シリアスで、信頼できる」ことを示す色。何年か前に卒論の監修をした学生は、ドイツの株式DAX上場企業110社のうち、実に68社が、紺色系の色をロゴに使っているということを調べてきた。「真面目な国、ドイツ」を、象徴するような色。そういえば、イタリアの銀行のロゴは、虹色だったり、赤紫だったり、オレンジだったりしていた。
うまい。 上がったり下がったりする箱=エレベーターということが、一目でわかる。
巨大なフランクフルト空港の中では、このミーティングポイントは、かなり重要。 ミュンヘンでは、中央は白丸のサインだったけれど、フランクフルトは、ばっちり赤丸。
ウイーンの出口のサインは、平面図だったけれど、こちらは断面図。空が開けている所へ出てゆく感じ。
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ところで、ベルリンの空港は?成田空港は?
・・・・・・自分が帰る空港のサインって、ちっとも見ていなかったことに気づいた。行きはわくわくだけど、帰りはへとへとだからだろか。あまりに慣れきって、目は開いていても、何にも見ていない証拠だな。反省。次回は、ちゃんと見てみます。
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阿部 雅世 公式サイト MasayoAve creation www.macreation.org
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