ティアガルテンの桜
東京より1カ月遅れて、ベルリンの春がやってきた。北国の春は、訪れは遅いけれど、冬眠からさめてからは早回し。枯れ枝のようにじっとしていた、森の木々のこずえも、二週間くらいの間にすっかり緑で覆われて、あらゆる花が一斉に咲きだし、気温はさほど高くもないのに、もう初夏の様相。長い春を楽しむことに慣れて育った日本人の私にとっては、欧州生活がどれだけ長くなろうとも、なんだかとても短い春だ。
ティアガルテンの森には、50年前に、日本の天皇から寄贈されたという、日本の八重桜の木が一本だけある。たった一本の桜なので、ベルリンでは、花見の対象にもなっていないけれど、それでも、じっくりと観察すれば、「日本人にとっての春らしさ」を十分に堪能させてくれる。
今年は、東京の桜の開花直前に、ものすごい規模の春の台風が来て、トラックがひっくりかえったり、屋根がめくれあがったり、というニュースがあって、「ああ、東京の桜も今年は開花前にちぎれて飛んでしまったか」と思いきや、そんなことは全然なくて、ちゃんと花が咲き、満開になり、そして、散っていったというのを見た。ちょっと力を入れてちぎれば、むしり取れてしまうような、細い茎の先についている、桜のつぼみのしなやかな強さに、今更ながら驚いたので、今年は、1カ月遅れのベルリンの桜を、つぼみのうちからよく観察することにした。本日は、その観察写真日記。
2012年4月2日。ベルリンに移植されて50年もたつのに、つぼみの時から驚くほど日本的。
こういう、どこへどう連れていかれようと、絶対に変わらないものを、アイデンティティーというのだな。
開きかけた芽も、こんなに桜色。
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2012年4月18日。つぼみでそろう。ますます日本的。
濃厚な桜色の芽から、葉っぱとつぼみが噴き出してくる。生まれたての葉っぱも赤い。
これは、桜だけではなくて、木の芽が吹く瞬間、森の木々のこずえは確かに一瞬赤くなる。
「赤ん坊」とは、人間だけの話ではなかった。
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2012年4月21日。開花。
桜餅を、無性に食べたい気持ちになる、日本の桜色・・・。
どこまでも、日本。
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4月28日。満開を裏側から観察する。
芽を包んでいた濃厚な桜色の殻も、こうしてお役御免になる。
八重桜 満開なれど ベルリンの 花見は「キーヨ」 ひとりなり
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阿部 雅世 公式サイト MasayoAve creation www.macreation.org
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今年の春は?
東京の桜はいよいよ。
by えび (2013-03-17 14:10)