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SPIRIT GARDEN 2009, Merano  

2006年の東京オペラシティーアートギャラリー、2008年の静岡市クリエーター支援センター(the center of creative communications CCC)で行った、子供のためのデザインワークショップ「SPIRIT GARDEN」を、今年はイタリアで2度開催した。5月には、イタリアの北の国境に近い山の中の町メラーノ(Merano/Meran)で、そして、この9月には、イタリア半島の長靴の付け根の真ん中あたりに位置するマントバ(Mantova)で、SPIRIT GARDEN -精霊たちの森- を、それぞれの地元の子供たちとデザインした。 

日本では、午前午後通して1回6時間のワークショップだったが、このイタリアでの2回は、他のイベントとの兼ね合いなどがあって、数時間ほどしか時間がもらえず、駆け足ワークショップになってしまった。でも、国が変わっても、子供のきらきら光る観察眼や、プロジェクトを理解する力や、集中力の素晴らしさに、まったく変わりはなく、イタリアでも、スケールは小さいながら、立派な2つの精霊たちの森を創ることができた。今回と次回のブログでは、その2つのワークショップの話。

メラーノ(Merano/Meran)は、山を越えたら、そのむこうはもうオーストリアという、イタリアの北側の国境に近い山間の町。ハプスブルグ家に統治されていた時代も長く、また歴史的に、イタリアとドイツの通商の要を果たしてきた土地でもあり、イタリアにありながら、イタリア語とドイツ語の2ヶ国語を公用語としている自治県の中にある。温泉の出る保養地として栄えた土地でもあり、初夏のバカンス客らしい人でにぎわうオーストリア風の街並みの向こうには、頂に雪渓を抱いた岩山が、そびえていた。町の中心にはが流れていて、ごうごうと音を立てて水が流れる川をみるのも、久しぶりだと思った。平地のベルリンの川は、こんな勢いで流れない。

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またここは、歴史的な文豪や知識人の集まる場所としても知られた場所で、単線の電車でたどりつく山間の隠れ里でありながら、驚くほど民度が高い土地である。 このワークショップを主催するのは、メラーノ市の市立図書館Biblioteca Civica di Merano。 ブルーノ・ムナーリの助言で創ったという、世界一の児童文庫と絵本の原画のアーカイブを持っている。この図書館が中心となり、毎年、市をあげて、Un due tre..òpla という子供のための文学祭が開催されていて、その中のイベントの一つとして、子供のためのデザインワークショップが企画されている。ムナーリの児童書の出版社としても知られるコッライーニ社が、企画に協力しており、コッライーニ社の依頼で、昨年いくつかのワークショップを指揮したのが縁で、今年のòplaでSPIRIT GARDENを、という話をいただいたのだった。

このワークショップは、地元の幼稚園や小学校からクラスが応募して参加する。3日間、毎日ひとクラスずつ、異なるクラスを3つも担当させてもらえるというので、SPIRIT GARDEN (スピリットガーデン)のほかに、感覚と想像力を鍛えるための新しいワークショッププロジェクト、I COLORI DEI PROFUMI (香りの色)とDESIGN GYMNASTIC A.B.C. (デザイン体操A.B.C)も持って行き、3日間、毎日違うプロジェクトに挑戦した。まさに、ワークショップを堪能の3日間。でも、まず、ここでは、イタリア版SPIRITGARDEN(スピリットガーデン)の話。

SPIRITGARDEN(スピリットガーデン)は、ワークショップ初日の5月20日。川沿いの自然公園の中にあるメラーノ文化センターの中、普段は会議室として使われている部屋が会場だった。この部屋の見取り図や写真を事前に送ってもらったところ、南東向きの窓が3つある部屋だったので、天気の良い初夏の自然光を使ってのインスタレーションができそうだ、と、今回のスクリーンは窓そのもの。シュバイツァー小学校Scuola Elementale Schweizerのドイツ系クラス1年生(7・8歳)のクラスの20人が参加した。このクラスの普段の授業は、ドイツ語だという。子供達は、ドイツ語もイタリア語もわかるので、イタリア語で指導してもかまわないが、ドイツ系住民と、イタリア系住民を抱えるこの土地の特殊な事情もあるから、見学に来ている先生たちや市の人たちのために、できればイントロダクションを、ドイツ語でもやってもらえないかと、ワークショップが始まる直前に、コッライーニのマルツィアさんが耳打ちしてきた。

ひぇぇ。もっと早く言ってくれれば、少しは準備ができたのに。16年鍛えたイタリア語に比べると、だいぶ聞き劣りがしそうな今だ初心者ドイツ語だけれど、そういう事情なら、恥を忍んでも、やらねばなるまい。思えば、この子供たちの人生の3倍くらいの時間は、無駄な努力のようなドイツ語学習を細々としてきたのだ。いまさら、できませんというわけにもいかないぞ、日本なでしこ。というわけで、イタリア語とドイツ語と2ヶ国語で、子供たちに自己紹介をして、今日はイタリア語でやりますけれど、質問はドイツ語でしてもいいですよ、なんだったら日本語でもいいですよ、「ワタシ、ニホンゴ、ジョウズデス」と言ってスタートした。

イタリア人の子供だから、日本人の子供のようには、おとなしくないわよ、そんなに集中力ないわよ、ぜったい掃除なんかしないわよ、と、マルツィアさんに、さんざん脅かされていたけれど、そんなことは全然なくて、日本のワークショップの時と同じように、子供達は好奇心いっぱいで、ものすごい集中力を発揮して、飽きちゃう子も、暴れる子もひとりもいなくて、最後のあとかたずけ、そうじまで嬉々としてやって、ワークショップが終わったとき、会場の床は、なめたようにきれいになっていた。

見学に来ていた先生たちは、ミラーコローMiracolo!(ミラクル)と囁き合っていたけれど、プロジェクトが面白ければ、飽きないのは、どこの国も子供も同じで、そうじだって、かたずけだって、みんなでやれば、本当に楽しいものなのだ。もしかしたら、それを忘れてしまっているのも、集中力が続かないのも、世界中、実は大人の問題なのかもしれないな、と、ますます思ってしまったワークショップだった。

以下、そのドキュメントから、抜粋。 

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2009年5月20日

SPIRIT GARDEN 2009, Merano 

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i400-2009SG_291.jpg                  *ドイツ系の8歳は大きい・・・(私が小さいのか)

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子供のためのデザインワークショップ 「スピリットガーデン2009、メラーノ」

指揮 阿部雅世 
プロジェクトメンバー: メラーノ・シュバイツァー小学校 ドイツクラス1年生20名 
制作アシスタント: キアラ・キアラ・デュランテ、ナディア・ガンベルティ
会場 メラーノ文化センター会議室
企画協力: コッライーニ出版 主催: メラーノ市立図書館児童図書アーカイブ ò.P.L.A. 

 

MasayoAve creation 公式サイト www.macreation.org

*記事、写真の無断転用は、ご遠慮ください。 転用ご希望の方は、info@macreation.org まで、ご一報ください。

 


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コメント 1

井の頭・浜中

メラーノの子供たち、いい顔してますね。
東京と静岡での子供たちを見ているようで、
「一列!」と声をかけている魔法使いの阿部さんの姿が目に浮かぶようでした。心配気なおとなたちに Miracolo!と囁かれるほどにまで精霊となった子供たち。
本当にワークショップに取り組む子供たちの姿は万国共通なんですね。
完成した森の、自然のやわらかい透過光もとてもいいです。
よりSPIRIT GARDEN のコンセプトにあうように思います。
by 井の頭・浜中 (2009-10-15 00:03) 

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