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ドイツ語満腹道場延長戦

近所の図書館から借りていた音楽CDを、返しに行った。この図書館からは、CDやDVDなら2週間、本なら4週間借りることができる。本は希望すれば、さらに2週間の延長が可能である。

 

貸し借りの際には、メンバーズカードを提示する。そうすると、受付の女性が、その中の情報を、レーザーでピッと読み取ってくれて、今、何を借りていて、いつまでに返さなければいけないかが、受付の画面に出る。CDを返却するのに、ピッとカードを読みこんだら、私の名前の下に、2月6日までに返すことになっている「30日で学ぶドイツ語」が出た。

 

受付の女性は、私の顔と、このタイトルを、ちらりと見ると、「こちらの本、2週間延長しておきましょうか。」と、優しい看護婦さんのような調子で、言った。そりゃ、30日でドイツ語はものにはならんわねえ。どう考えても。Ja, gerne イエス、プリーズ、お願いします。」

 

というわけで、自分に大甘。締め切りも待たずに、満腹道場は延長戦持ち越し。

 

なにしろ、この本に出てくるフレーズを、全部丸覚えしようというのである。そうつるつると、一日1チャプターは、入らない。3週間で、やっと本の3分の1、100ページくらいを、ホームに入ったときからすでに満員の電車に、無理やり人を詰め込むようにして、脳みそに詰め込んだところである。4週間で終わらせるのは、絶対無理。ください、ください、あと2週間。それだって、間に合うかどうか分からないけれど。ともあれ、締め切りがこれで延びた。

 

書いたり読んだりするだけならば、ゆっくり考える時間もあるけれど、話す、というのは、吸って吐いてと、呼吸のように言葉が出てこないと、お話にならない。頭の中を、理屈で、あーだから、こうで、と、文法ぐるぐる回している間は、会話にならないし、だから、話し言葉というのは、せりふとして、感覚で覚えてしまって、あとはそれを応用してゆくのが、一番いい。

 

とは言っても、最初は、吸って・・・えーと、えーと、えーと、えーと・・・吐く、くらいでしか、言葉が出てこないし、今覚えたことを、もう忘れ、青息吐息のとぎれとぎれで、たいへんまどろこしい。しかも、詰め込む先は、44歳の脳みそだ。4歳のようには、いかなくても仕方がないけれど。

 

ピアノで新しい曲を一曲覚えて弾くのに、最初は、1小節、2小節ずつ、手に覚えさせていって、だんだん、それがつながってきて、それで、暗譜で、最期まで弾けるようになって、考えなくても手が動くようになると、やっと自分の音楽になってくる・・・、言葉が話せるようになるプロセスは、あのピアノを弾けるようになるプロセスに、とても似ているかもしれない。つるりと、自然にせりふが、それも、連続して出るようになるまでには、やっぱり時間がかかる。

 

いずれにしても、1小節ずつ、詰め込んでは、忘れて、も一回詰め込んで、というのは、大変しんどいものがあるが、それでも無理やり、詰め込んで、詰め込んで、詰め込んでいると、あるところで、はみ出しちゃうようにして、ぽろりと、自然にせりふが出てくるようになる。これが、いっぱいはみ出してくるようになると、自分の言葉になってくるはず・・・だけれど、ところで、いつでてくるのかね、と思いつつの、詰め込み式満腹道場3週間。なんだか詰め込むばかりで、新たに出てくるものはないままの3週間だったけれど、今朝、目が覚めて、半分寝ぼけたまま、洗面所に入ったところで、どういうわけかわからないが、「Das kann man nicht zusagen」というせりふが、独り言のように、ぽろりとドイツ語で出た。な、な、なんだ?

 

これは、今、一生懸命やっている本の中にあったせりふではないぞ。それなのに、どういうわけか、急に自分の口から出てきたから、えー、これって、どういう意味だっけ、と、単語をたどってよーく考えたら、「それは、ちょっとお受けしかねますねえ」とか「それは、受け入れられませんねえ」という意味だったので、また驚いてしまった。意味はよく分からないまま、どこかで、聞きかじっていた言葉かしらん。

 

それにしても、昨日の夜、努力して覚えたせりふではなくて、いつから隠れていたか知らないが、脳のヒダヒダの裏側に、ぺたりと張り付いてせりふが、急に飛び出してくるのだから、努力したほうがいいのやら、むだなのやら・・・、脳みその中というのは、摩訶不思議なものだ。

 

しかしねえ、最初に出た記念すべきセリフが 「それは、ちょっとお受けしかねます。受け入れられませんね。」、というのも、この先、ドイツ語ができるようになったらなったで、人生は結構大変よ、ということを、暗示しているみたいで、やれやれなのである。

 

 

阿部 雅世 公式サイト MasayoAve creation  www.macreation.org

 


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