SPIRIT GARDEN 2008, Shizuoka
思えば、緑に飢えていたミラノ生活から生まれた「小さな現代庭園」を、ガーデン・クロッシングという、これまた小さな展覧会の中で、こっそりデザインしてみたのは、2004年の秋のこと。
そのアイディアは、それから2年醸造されたのち、2006年に、子供のためのデザインワークショップ 「スピリット・ガーデン2006」として、東京オペラシティーアートギャラリーの主催で実現した。それは、身近な自然に隠された不思議を、五感をフルに使って観察することから始め、子供達の持つ、知りたいという気持ちや、分かる喜び、伝えたいという気持ちを、プロジェクトの中に発揮させるデザイン・ワークショップで、子供達もスタッフもいっしょになって、デザインチームを作り、一つの庭を仕上げるという試みだった。
そして、最初の粟粒のようなトライアルから、4年が過ぎた今回は、静岡市クリエーター支援センター(the center of creative communications CCC) の主催で、「魔法の庭」を制作する機会をいただいた。
SpiritGarden2008,Shizuoka
子供のためのデザインワークショップ 「スピリット・ガーデン2008」
指揮: 阿部雅世
(建築家・デザイナー 国立エストニア芸術大学教授)
野草観察指導と庭園監修: 浜中和晴
(庭師・野草研究家 井の頭自然文化園施設係主事農園芸職員)
プロジェクトメンバー: 駿府の小学1・2年生 26名
制作アシスタント: 花澤啓太 繁田和美 堀澤真弓
企画制作・主催: 静岡市クリエーター支援センター
以下は、その制作ドキュメントから抜粋。できたてのほやほやです。
photo© Ave design corporation & CCC the center of creative communications 2008
無断転用を禁ず
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子供のためのデザインワークショップ
SPIRIT GARDEN 2008, Shizuoka を終えて
現代社会の舞台裏で、身の回りにあるものを観察し、ほんの少し足りないものを分析し、必要なものに変換して、舞台の上にそっと提供する、これが、デザインという仕事です。
今回のワークショップの会場となったのは、静岡市クリエーター支援センター。ほんの少し前まで、静岡市立青葉小学校だった建物の中です。今は、世界のクリエーターの作品を紹介する展覧会や講演が開かれたり、静岡の若手クリエーターのアトリエとして活用されたり、また、静岡の国際交流の拠点として、その中で、新しい活動が活発に行われています。
でも、子どもの姿のない「小学校の建物」というのは、どう改装をしても、いつも、ほんのすこし悲しいものです。特に、吹き抜けまわりの二階のギャラリーは、建築的には、とても素敵な場所なのに、子供の背丈の低くて長い洗い場を持て余して、少し寂しい場所になっていました。ですから、その場所に、子供達のほとばしる生命力が宿る「現代庭園」をつくり、小学校だった時のこの場所の楽しさを、魔法で蘇らせるような、そういう場所にすることが、今回のデザインプロジェクトです。
このデザインワークショップは、子供たちの鋭い観察力、豊かな想像力を、そのプロジェクトの中に存分に発揮できるような器として計画したものです。また、子どもたちと講師、スタッフで、一つのデザインチームを作り、いっしょに自然を観察し、図画工作の力を発揮して、みんなで一つのものに作り上げる、デザインという仕事の喜びを、子供たちが、実体験できる機会となるように、心を尽くしました。
タイトルの「スピリット・ガーデン」とは、「精霊たちの庭」という意味です。ここでは、きらきらと感性が光る子供たちと、真摯な気持ちで子どもたちを、プロジェクトを、支えてくれたスタッフが、文字通りの精霊でした。スタッフの温かいまなざしに守られて、子どもたちは、もっと知りたいという気持ちや分かる喜び、伝えたいという気持ちを存分に発揮して、大人の私たちが、忘れてしまったものを蘇らせる、素晴らしい仕事をしてくれました。そこにほとばしる、子どもの命の勢いが、この庭に宿って、ここはもう、さびしい場所ではありません。
この企画を主催してくださった静岡市クリエーター支援センターのみなさま、プロジェクトに対する深い理解を持って準備と実現に奔走してくださったプロデューサーの久米英之氏、キューレターの大森久美氏をはじめとする静岡市クリエーター支援センタースタッフのみなさま、温かい目で制作プロセスを記録して下さった静岡市クリエーター支援センター撮影クルーのみなさま、子供が力を存分に発揮できるよう、黒子に徹して関わってくださった制作アシスタントのみなさま、信頼を持って子供たちを参加させてくださったご両親のみなさま、子どもたちに本格的な野草の解説をしてくださった、庭師で野草研究家の浜中和晴氏、野草の鉢をご提供くださった井の頭自然文化園園長 永井清氏、法被をお貸しくださった六義園のみなさまに、心より感謝いたします。
駿府のちいさな精霊たちが、「魔術師」となって作り上げた魔法の庭に、日本の希望の光を感じていただければ幸いです。
2008年8月3日
阿部 雅世
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スピリットガーデン2008は、9月30日まで、一般公開されています。
Spirit Garden 2008展
2008年8月4日(月)-9月30日(火)10:00~20:30 〔入場無料〕
休館日 :日・祝日
会場 静岡市クリエーター支援センターCCC 2F
〒420‐0853 静岡市葵区追手町4番16号
電話 054-205-4750 e-mail: info@c-c-c.or.jp
アクセスマップ http://www.c-c-c.or.jp/info/map.html
阿部 雅世 公式サイト MasayoAve creation http://www.macreation.org
© Ave design corporation 無断転用を禁ず
阿部さま、
SPIRIT GARDEN 2008 IN SHIZUOKA お疲れ様でした!!
今回も、若き魔術師たちを支える長老として参加させていただき
とても光栄でした。
そこで繰り広げられる魔法に何度も目を奪われ、
眼前に出来上がった「魔法の庭」が出現すると、
そのあまりの美しさに我を忘れて、
野太い声で歓声をあげてしまう自分がそこにはおりました。
駿府の魔術師たちの力は偉大でした。
by 井の頭・浜中 (2008-08-26 02:01)